NMNは体内で重要な働きをするNAD+の原料となる物質です。加齢にともなって減少するNAD+を補充することで、老化を遅らせる効果が期待されています。しかし、NMNの副作用や危険性について気になる方も多いでしょう。
本記事では、NMNに若返り効果が期待される理由を解説するとともに、サプリメントや点滴による摂取の際の注意点についてもお伝えします。
NMNとは
NMNは私たちの体内で自然に生成される重要な物質です。
正式名称は「ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチド」で、ビタミンB3の一種に分類されます。NMNはあらゆる生物の体内で作られていますが、加齢と共にその量が減少していくことが知られています。
NMNが体内で減少すると、エネルギー代謝に関わるNAD+という物質の生成に影響を与えます。NAD+は人間の体のさまざまな機能を正常に保つために欠かせない役割を担っているため、NMNの減少は体調面での変化を引き起こす可能性があるのです。
NMNは母乳や枝豆、ブロッコリーなどの食品にも含まれていますが、年齢と共に体内での生成量が減少するため、十分な量を取るのが難しくなってきます。そのため、近年ではNMNをサプリメントなどの形で摂取することが注目されるようになりました。
ただし、NMNサプリメントの安全性や効果についてはまだ研究途上の部分もあるので、専門家に相談しながら、自分に合った適切な方法で取り入れる必要があります。
NMNに若返り効果が期待される理由とは
NMNを摂取すると、体内の老化を抑制し、若々しさを保つ効果が期待されています。
その理由は、NMNがNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体であり、NAD+が「長寿遺伝子」とも呼ばれるサーチュイン遺伝子の活性化に関与しているからです。
NAD+は、人間の体のエネルギー産生に欠かせない補酵素です。加齢とともにNAD+の量は減少し、40代では10代後半の頃の半分程度にまで減ってしまいます。しかし、NAD+は直接摂取しても、体内に吸収されにくいという特性があります。そこで注目されているのが、NAD+の前駆体であるNMNなのです。
NMNの摂取により体内のNAD+量を増やせば、サーチュイン遺伝子の活性化につながります。サーチュイン遺伝子は、DNA修復やエネルギー代謝、細胞分裂、体内時計など、老化に関連するさまざまな機能をコントロールしています。活性化されたサーチュイン遺伝子が老化した細胞に作用すると、DNAが修復されて細胞が「若返る」ことが明らかになっています。
ヒトには7種類のサーチュイン遺伝子があり、NAD+はこの7種類すべてを活性化させるとされています。つまり、NMNを摂取してNAD+量を増やすことで、サーチュイン遺伝子の活性化を促し、体内の老化を抑制する効果が期待できるのです。
NMNの副作用や危険性について
NMNは若返り効果が期待できることがわかりましたが、一方で副作用や危険性が気になる方も多いでしょう。ここでは、NMNの副作用や危険性について、以下の2パターンで解説します。
- サプリメントによる摂取の場合
- 点滴による摂取の場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
サプリメントによる摂取の場合
NMNサプリメントは、一般的に安全性が高いと考えられています。慶應義塾大学医学部と米国ワシントン大学医学部が共同でおこなった臨床試験では、健康な男性10名にNMNを投与し、体内で適切に代謝されることや安全性が確認されました。
ただし、NMNを過剰に摂取すると、副作用が現れる可能性があります。NMNは体内でNAD+に変換されますが、この過程で肝臓や消化器官に負担がかかります。その結果、胃の不快感や吐き気、めまい、頭痛などの症状が起こることがあるのです。
また、NMNサプリメントは比較的新しい製品であるため、長期的な安全性については十分なデータがありません。アレルギー反応や体質との相性など、個人差も考えられるでしょう。NMNサプリメントを摂取する際は、推奨される用量を守り、体調の変化に注意を払うことが大切です。
点滴による摂取の場合
NMNの点滴療法は、サプリメントよりも高濃度のNMNを短時間で体内に取り入れられる方法として注目されています。しかし、点滴療法の安全性については、まだ十分な臨床データが揃っていないのが現状です。
NMNの点滴療法で報告されている副作用には、頭痛や吐き気などの比較的軽度のものから、アナフィラキシーショックに似た重篤な症状まであります。アナフィラキシーショックは、NMNに対する急性のアレルギー反応で、血圧低下や呼吸困難を引き起こす危険な状態です。
NMNの点滴療法は、医療機関で医師の管理下でおこなわれるべき治療法です。安全性や有効性について十分な研究データが得られるまでは、慎重に検討する必要があるでしょう。
NMNで安全に若返りを実感するためのポイント
NMNで安全に若返りを実感するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- サプリメントを活用する
- NMNの摂取量は150~300mgが目安
それぞれ詳しく解説します。
サプリメントを活用する
NMNで安全に若返りを実感するためには、点滴ではなくサプリメントがおすすめです。先述のとおり、点滴によるNMNの摂取は安全性が十分に確認されていないからです。
点滴でNMNを摂取すると、高濃度のNMNが血管から直接体内に取り込まれるため、NMNの濃度が必要以上に高くなってしまう危険性があります。高濃度のNMNが長期間体内に留まる可能性があり、運動神経の麻痺のような重篤な副作用が考えられるのです。
対してサプリメントの場合、腸管がNMNの吸収を調整してくれるため、過剰摂取を防げます。そのため、NMNを安全に摂取したい方は、点滴ではなくサプリメントを選ぶとよいでしょう。
NMNの摂取量は150~300mgが目安
NMNで安全に若返りを実感するためのもう一つのポイントは、適切な摂取量を守ることです。現在、NMNの推奨摂取量は1日あたり150〜300mgとされています。
この量は、これまでの研究で安全性と有効性が確認された範囲です。過剰摂取は副作用のリスクを高めるだけでなく、長期的な安全性も確認されていません。そのため、自己判断で摂取量を増やすことは避けるべきでしょう。
また、NMNは比較的新しい成分であり、安全性の確認には更なるデータの蓄積が必要なため、NMNで若返りを目指す際は推奨量を守ることが大切です。1日150〜300mgの範囲内で、自分の体調と相談しながら適量を摂取しましょう。
まとめ
NMNは、体内の老化制御メカニズムに働きかけることで、若返り効果が期待される注目の成分です。サーチュイン遺伝子の活性化を促し、細胞のエネルギー代謝を改善することで、加齢にともなうさまざまな機能低下を予防する効果が期待できます。
ただし、NMNの摂取には適切な方法と量を守ることが重要です。サプリメントで摂取する場合は、国産の高品質なものを選び、推奨量を守りましょう。一方、点滴による摂取は、高濃度のNMNが体内に取り込まれるため、副作用のリスクが高くなります。
NMNは有望な成分ではありますが、まだ解明されていない部分も多いのが現実です。自己判断での過剰摂取は避け、専門家のアドバイスを参考にしながら慎重に取り入れましょう。