ミトコンドリアの老化は活性酸素抑制と基礎代謝の低下を引き起こす
太古の地球に生まれたミトコンドリアの祖先は、酸素を利用してエネルギーを生み出すように進化し、真核生物との共生が始まりました。そのおかげで、細胞は解糖系で得られる ATP の約 15 倍のエネルギーを得られるようになり、生物は飛躍的な進化を遂げます。
活性酸素の生成による細胞の老化促進
高エネルギーを得た見返りに細胞は「酸化」という大きなリスクを背負いました。鉄は酸素に触れると錆びますが、これは「酸化」して劣化する作用で、細胞や DNA(遺伝子)も酸素に触れる(酸化)と傷つき、寿命が短くなったり、異常な状態に変異しやすくなります。
ミトコンドリアがエネルギーを生み出すとき、必然的に産生される「活性酸素」ですが、人体内の活性酸素の大部分がミトコンドリアによって発生すると言われています。
細胞は抗酸化物質などによって活性酸素を制御していますが、ミトコンドリアの劣化などが原因で過剰に発生した活性酸素が、ミトコンドリアと細胞の老化をさらに進行させてしまいます(図1)。
活性酸素による基礎代謝の低下
さらにミトコンドリアの劣化によってエネルギー産生と細胞での燃焼効率も下がるため、基礎代謝が低下します。すると食事で摂り入れた栄養が消費し切れず、あまった糖質や脂質が体脂肪となって蓄積されます。
内臓脂肪や血液中のコレステロール増加は、糖尿病やさまざまな血管の障害を進行させ、脳血管障害などの重病を引き起こす可能性が高まります(図 2)。
このようなことから分かるように、ミトコンドリアを元気な状態に保つことが私たちの健康にとって大変重要なのです。
エネルギー代謝の仕組み
もともと活性酸素は体内で殺菌作用する有益なものですが、過剰に発生すると一転して細胞を傷つける有害な物質になります。炎症反応は免疫が異物に対して行う攻撃によって起きますが、炎症箇所は多くの活性酸素が異物排除に働いています。
活性酸素自体が問題というよりその過剰な発生が問題なのです。
ミトコンドリア機能低下の悪影響
ミトコンドリアは加齢と共に数も活性も低下し、老化することがわかっています。
若い時と同じように食べると太る、運動しても成果が出ない、疲れが取れにくいなどは、ミトコンドリアの老化が原因のひとつです。各細胞にあるミトコンドリアの機能低下がさまざまな不調を引き起こすと考えられています。