5-ALAとは?作用機序や期待される効果について

近年、ミトコンドリアを活性させるなどの効果が期待されることからより注目度が高まっているアミノ酸の一種である5-ALA。

当メディアでは、5-ALAに期待される効果及び、これまで明らかになっている研究データを含めて紹介いたします。

5-ALAとは?

5-ALA(5-アミノレブリン酸=5-Amino Levulinic Acid)とは、ファイブエーエルエー、またはアラとも呼ばれるアミノ酸の一種です。

5-ALAは特別なものではなく、ヒトや動物、植物など、あらゆる生命体の細胞内でエネルギーを作り出す、ミトコンドリアで生産される天然のアミノ酸で、⾝体の中で様々な役割を担っています。

5-ALAは私たちの細胞内にあるミトコンドリアの中で常に作られていますが、その⽣産量は17歳をピークに、加齢と共に減少の一途をたどります。[1]実際に、5-ALA 生合成能力が、加齢に伴い低下する[2]ことが様々な研究で明らかとなっています。

これらの観点より、若返りの成分として近年、より注目を集めている成分の一つとなります。

5-ALAは身近な存在で食品にも含まれる

実は、5-ALAは身近な存在でもあり、食品にも僅かながら含まれていることが明らかとなっています。

食品μg/100g
赤ワイン300
白ワイン180
日本酒50〜150
ビール30
発泡酒10
140〜370
ノニエキス10-30
緑茶6〜702
5-アミノレブリン酸の科学と医学応用、東京化学同人を参照

5-ALAを食品から摂取することも可能ですが、含まれている量がごく微量となります。そのため、現在まで発酵法を用いて5-ALAを量産できるようにスケールアップ研究が日々行われてきました。

5-ALAの発見と産業化までの流れ

もともとALAは、一部の実験の試薬として使われていました。5-ALAを化学合成する方法は非常に煩雑であり、一時期はプラチナよりも高いと言われていたこともあります。

その状況を一変させたのが、コスモ石油の研究グループによって確立された、発酵法によるALAの大量合成となります(田中ら,1999)。この発酵法において、光合成細菌ロドバクター・セファロイデスの非光要求型株を、突然変異により遺伝子組換えを用いずに育種し、効率的な ALA 生産菌として使用が可能となりました。

本法の確立によって市場に安価で高品質なALA の供給が可能となり、以降 ALA を用いた科学研究が進歩し、人体への様々な作用が明らかとなってきております。現在では、サプリメントへの活用など様々な用途としてALAは様々な期待がされております。

5-ALAの作用機序や働きについて

5-ALAは、細胞内にあるミトコンドリアの中で常に作り出されていて、ヒト・動物の体内で、また植物の細胞内で、重要な働きをしています。

5-ALAは結合する物質により、働きを変えることにも注目されており、鉄(Fe)と結合するとヘムとなり、エネルギー生産に不可欠なヘム・シトクロムやヘモグロビンの合成に寄与します。

コバルト(+Co)と結合した場合は、ビタミンB12 の合成に関与するなど、5-ALAには多種多様な働きを持っております。

5-ALAはミトコンドリアで生産される

私たち人間が活動するためのエネルギーの大部分がミトコンドリアで⽣産されていますが、そこで重要な働きをするのが5-ALAです。

5-ALAはミトコンドリアの中で作られた後、ミトコンドリアの外(細胞内)に移動して8分⼦が集合した状態(ポルフィリン)になります。その後、再びミトコンドリア内に取り込まれてFe(鉄)と結びつき、ヘムとシトクロムを合成します。

ミトコンドリアの内膜にたんぱく質複合体を埋め込むことで 、 酸素から水とエネルギー(ATP)を⽣産します。このATP⽣産工程で中心的な役割を果たすのが、ヘムとシトクロムです。

このように、5-ALAの働きでエネルギー工場(ミトコンドリア)が活性化して、ATPが効率的に作られます。

5-ALAに期待される効果とは?

効果1:ミトコンドリアの活性化

近年、若返りなど美容の観点からも注目されているミトコンドリア。特に5-ALAにはこのミトコンドリアのエネルギー効率を上げて、代謝を活性化することが期待されています。5-ALAはミトコンドリア内で生産される天然アミノ酸であり、体の中で様々な役割を担っています。

5-ALAには、ミトコンドリアを活性化し、エネルギー(ATP)生産の効率を高めて、代謝を高めることが明らかとなっています。

5-ALAはミトコンドリアの中で作られた後、ミトコンドリアの外(細胞内)に移動して8分⼦が集合した状態(ポルフィリン)になります。

その後、再びミトコンドリア内に取り込まれてFe(鉄)と結びつき、ヘムとシトクロムを合成します。ミトコンドリアの内膜にたんぱく質複合体を埋め込むことで 、酸素から水とエネルギー(ATP)を⽣産します。このATP⽣産工程で中心的な役割を果たすのが、ヘムとシトクロムです。

このように、5-ALAの働きでエネルギー工場(ミトコンドリア)が活性化して、ATPが効率的に作られます。

5-ALA経口投与によるATP生産量増加に関する研究データ

出典:Ogura et al. BMC Research Notes, 4: 66 (2011)

5-ALAの摂取でエネルギー(ATP)生産効率が向上すること、また筋肉中のATP濃度が⼤きく上昇することが、明らかになっています。
東京工業大学が⾏った研究で、5-ALAが肝臓システムのATP濃度を上昇させることが確認されました。

左の表は、5-ALA15週間経口投与されたマウス肝臓のATPレベルが、コントロールマウス(無処理)肝臓の1.6 倍とATP合成量が高まったことを示しております。

効果2:育毛作用

5-ALAと鉄を組み合わせることで、育毛効果が期待されることが本メディアの共同研究者である田中 徹先生よりFRAGRANCE JOURNAL 2005―12の「5-アミノレブリン酸と鉄の発毛促進効果」より言及されています。

毛周期が休止期であるC3H/HeNCrJマウス6匹を一群とし,背部の毛を剪刀にて除毛した後,各種鉄剤との組み合わせ試料0.1mLを1日1回塗布することで検証しております。

FRAGRANCE JOURNAL 2005―12の「5-アミノレブリン酸と鉄の発毛促進効果」より引用

結果としては、鉄とALAの組成物(Fe-ALA)はC3Hマウスを用いた実験で5%ミノキシジル製剤の1.8倍もの毛の伸張を示す結果となっています。

本検証は、マウスだけでなく23名の男女(内3名女性)を対象にFe-ALAの局所塗布実験が行われています。検証条件は、1日1回2mlを局所に塗布し、2~5時間後に洗髪を1ヶ月間行っています。

実験期間としては、短期間ではあるが、抜け毛が減ったと言う意見が多く聞かれ,以下の写真に示すよう短期間での発毛促進が示されています。

また、試験者は患部の痒みや赤みなどの副作用も感じることはない結果となっているため今後は、育毛剤としての活用も期待されています。

FRAGRANCE JOURNAL 2005―12の「5-アミノレブリン酸と鉄の発毛促進効果」より引用

効果3:コロナ(COVID-19)に対する効果

コロナの後遺症改善や、デルタ株やオミクロン株に対してウィルス抑制効果があることが5-ALAに対して一定の効果を示すことが期待されております。これまでに以下のような臨床結果が明らかとなっています。

後遺症改善に対する臨床データ

5-ALAと鉄剤(SFC)の28日間摂取による安全性及び症状への影響に関する試験が実施されました。スマートウォッチと電子日誌による⾏動モニタリングを⽤い、より客観的な評価となりました。

その結果、安全性と共に、疲労感のVAS、EQ5D5Lで評価した生活の質のスコア、スマートウォッチで取得した睡眠やストレスの状態が、5-ALA摂取群(5-ALA群)では摂取前と比較して、改善していることが確認されました。

【Day-0と介入後の1週間の平均疲労感VAS値】
引用文献:Phase 2 randomized clinical trial of 5-Aminolevulinic acid plus sodium
citrate chloride vs placebo for Covid-19 infected patients recovered
with sequelae

5-ALAの特性である「ミトコンドリアの活性化」により、エネルギー代謝が促進されたことが、試験結果に寄与したと考えられます。試験は28日間でしたが、試験期間以降も摂取を継続することで、さらなる改善が示される可能性があります。

上記の結果から5-ALAに期待される効果は以下の通りです。

  1. 疲労感の改善
  2. 生活の質(QOL)向上
  3. 深い睡眠が増加

新型コロナウイルスのデルタ株、オミクロン株への5-ALAの感染抑制効果

⻑崎大学では、5-ALAによる新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるデルタ株、オミクロン株を用いて、培養細胞における感染試験(in vitro試験)を⾏いました。その結果、5-ALAの濃度を高めることで、各変異株の感染を抑える効果があることが示されました。

5-ALA及び鉄剤によるウィルス活性の抑制データ
引用文献:5-Aminolevulinic acid antiviral efficacy against SARS-CoV-2 omicron variant in vitro

上記のデータは、オミクロン株に対してALA及びALA+鉄剤を混合した薬剤を加えたときの阻害率を示しております。赤線を確認すると、5-ALAの濃度依存的にウィルス抑制率が高まっていることが明らかとなっております。

また5-ALAにはミトコンドリアを活性化する効果があることから、ウイルス感染で⽣じるミトコンドリアの機能低下を抑えることで、ウイルスによる正常細胞への障害を抑制すると考えられます。

効果4:肝臓の機能改善

肝臓はエネルギーとしてATPを用いて、肝細胞が毒素の代謝や解毒の作業を行います。十分なATPが供給されると、肝臓の代謝活動が活発になり、有害な物質の除去が効率的に行われます。


さらに、ATPの増加は肝臓の再生力を高め、損傷した肝臓細胞の修復をサポートします。これにより、肝臓機能の維持と向上が期待でき、肝臓に関連する疾患や脂肪肝のリスクが軽減されます。
エネルギー供給の増加は肝臓の健康を促進し、全身の代謝プロセスにも良い影響をもたらす可能性があるのです。

参照文献、書籍

参考文献

  1. Jun-Ichi Hayashi et al, J Biol. Chem. 269, 6878-6883 (1994)
  2. Paterniti et al. Arch Biophys. 1978 Dec;191(2):792-7
  3. Ogura et al. BMC Research Notes, 4: 66 (2011)
  4. FRAGRANCE JOURNAL 2005―12の「5-アミノレブリン酸と鉄の発毛促進効果」
  5. Phase 2 randomized clinical trial of 5-Aminolevulinic acid plus sodium citrate chloride vs placebo for Covid-19 infected patients recovered with sequelae
  6. 5-Aminolevulinic acid antiviral efficacy against SARS-CoV-2 omicron variant in vitro

書籍

  • 札幌禎心会病院 脳腫瘍研究所所長 金子貞男著-奇跡の物質ALAの医療革命
  • 5-アミノレブリン酸の科学と医学応用、東京化学同人
  • 生物工学会誌 第95巻 第9号